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歌に繋がる楽曲の聴き方・捉え方

2017/10/09

こんにちは。
東京・吉祥寺 M&N Bit Of Sound ボイストレーニングスクール ボイストレーナーのフルカワです。

 今回は【歌に繋がる楽曲の聴き方・捉え方】というお話です。前回の記事で、聴くことの重要性について長々と説明いたしましたが、今回はその内容をより具体的に掘り下げ、動画や音源を紹介しながら、より良く歌うことに繋がるような楽曲の聴き方や捉え方についての話をしていこうと思います。

 突然ですが皆様。Miles Davis という世界的なジャズトランペッターをご存知でしょうか。一部ファンの間では「モダンジャズの帝王」などと呼ばれる、偉大なミュージシャンです。その彼の本の中に、「まず弾かずに耳を傾けろ。次に感じるんだ。そうしたら、今度は弾きたいと思ったものはなんであれ弾くな。その周りのものを弾け。」という一節があるんです(『アガルタ』『パンゲア』の真実 p184より抜粋)。これはきっと、「良い楽曲やカッコイイ楽曲を実際に聴いたりすると、思わずその主旋律を奏でてみたくなる気持ちが湧いてくるけれど、一度その欲望を抑えながら、まずはその楽曲とじっくり向き合ってみて、その良さをしっかりと感じてみよう。そしてそれを感じながら、印象的な旋律や耳に残るリズムセクションなど、その楽曲に詰め込まれた情報をしっかり分析し、理解しよう。そこまでしてようやく、自分の担当パートをきちんと演奏することができるんだ。」ということなんだろうと、私は勝手に解釈しています。前回の記事でも、周りの音をしっかり聴いて分析することが大事だという話をしましたが、世界的なトップミュージシャンでさえこういった発言をしているわけですから、これこそがより良く歌うために必須な要素であるということは間違いないでしょう。少しずつでも出来るようにしてきましょうね!

 それでは実際に、具体例を挙げながら、聴き方、捉え方を説明していこうと思います。やはり音源で耳だけで聴き取ろうとするよりも、動画などで実際の演奏の様子を見てみる方がわかりやすいのではないかと思います。その中でも特に簡単なもの、わかりやすいものから取り掛かるのが吉でしょう。バンドやユニットなどで「3ピース(スリーピース)」と呼ばれる三人組の構成があります。ボーカルを含むものから楽器陣だけのものまで様々です。まずはライブ動画を二つ紹介します。

The Police – Message in a Bottle

Hiromi Uehara The Trio Project  – Flashback

 前者はベースボーカル・ギター・ドラムのロックトリオ。後者はピアノ・ベース・ドラムのジャズトリオになります。どちらも音が分厚くてとても三人で演奏しているとは思えないくらいの素晴らしい演奏だと思います。これだけ音の数が少なければ、まずはそれぞれの楽器の音を聞き取れると思いますし、ジャズトリオのようにボーカルがいないパターンの方がある種わかりやすいかもしれませんね。こういった場合は特にリズムの変化にも注意しながらじっくり聞きこんでいただければと思います。

 次にヒップホップ方面から攻めてみようと思います。Montell Jordan の代表曲になります。この楽曲は当然ボーカルのメロディーラインやラップ部分もかっこいいのですが、後ろのトラック(オケ)に注目していただければと思います。

Montell Jordan – This Is How We Do It

 前奏の後、ボーカルが入ると演奏はドラムのビートだけからスタートし、4小節ごとにベース、ピアノと続き、サビに入ると掛け合いでコーラスが入り、2番になるとドラムとベースから始まり、ピアノが入ると一瞬ベースのパターンが変わり、最も音が重なるサビがまた来て、ラップが入るとほぼドラムだけで、その後またサビでフェードアウト・・・という構成になっています。ベースラインはほぼ繰り返し(ループ)になっていますし、音の重なりが多くなって合いの手が入ってくるので、サビ感が出るといった感じでしょうか。わかりにくければボーカル無しのバージョンもリンクしておきますので、聴いてみてください。

Montell Jordan – This Is How We Do It -Instrumental-

 次もヒップホップ寄りの楽曲です。ヒップホップを含むブラックミュージックには「リミックス」という表現方法があります。既存の楽曲を編集、再構成するなどして新たな楽曲のアレンジを作り出す方法です。下の例は Craig David の楽曲のオリジナルとリミックスを挙げてみました。

Craig David – Rendezvous

Craig David – Rendezvous (Blacksmith RnB Re-Rub)

 聴き比べていただければわかるのですが、ボーカルの歌っているメロディーはほぼ同じですが、後ろで鳴ってる音はまるで違いますよね。スピードも違えばコード進行も違う。なのに楽曲としてどちらもきちんと成立しているわけです。この例のように全く違うリミックスもありますが、ほんの少しだけ変わっているだけのもの(前奏や後奏の長さが変わって楽曲自体の尺が変わったり、音色が削られてよりシンプルになっているだけだったり。)も存在します。こういった手法が用いられるようになったのは1970年代のディスコブームの頃で、ニューヨークのダンスフロアでDJが流していたソウルミュージックやファンクミュージックの・・・っていう話をしていると話が逸れてしまいますので、また追い追いお話しできればと思います。ちなみに私個人としては、オリジナルのゆったりした感じも嫌いではないですが、リミックスの方が好みだったりします。

 ロックバンドの名演に戻ります。Eric Clapton の、誰もが一度は耳にしたことのあるのではないかという名曲、Layla です。この曲のオリジナルバージョンとアコースティックバージョンの違いを聴き比べていただければと思います。

Eric Clapton – Layla

Eric Clapton – Layla (acoustic)

 先ほどのリミックスとは違い、セルフカバーとでもいいましょうか。激情迸る感じの前者と、大人な落ち着きのある後者。甲乙つけがたいですね。ちなみに三つ目のバージョンもあるのはご存知でしょうか?初耳だ!という方は是非探してみてください。ヒントは Wynton Marsalis です。

 最後に面白い動画を幾つか。Queen の名曲 Bohemian Rhapsody です。オリジナルが素晴らしいのは言うまでもないのですが、その下の二つもなかなか面白いアレンジになっています。アカペラコーラスユニット Pentatonix が声だけでカバーした動画と、髭もじゃのおじさま Richie Castellano
 氏の一人多重録音です。どちらもそれぞれのそれぞれのパートがわかりやすい編集になっているので、ぜひ見てみてくださいね。

Queen – Bohemian Rhapsody

Pentatonix – Bohemian Rhapsody cover

Richie Castellano – Bohemian Rhapsody cover

 
 いかがでしたでしょうか。楽曲を分析し理解する・・・なかなか難しいことですが、これを徹底的に行っていくと、今まで聞こえなかった音が聞こえるようになったり、今まで気づかなかったことをたくさん発見できるようになるはずです。その楽曲をより深く理解することができれば歌うことも楽しくなってきますし、オリジナル楽曲を作っているような方であれば、アイデアの引き出しがどんどん増えていくことでしょう。中国の兵法書『孫子』に、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という一節がありますが、音楽、歌うことに例えると、「彼」は歌おうとする楽曲のこと、「己」はその歌い手の特徴や技量を指すことになると思います。ボイストレーニングをコツコツ繰り返すことで「己」を知るだけでなく、楽曲を分析し理解することで「彼」をより深く知ることもどんどんやっていきましょう。この記事がそのきっかけになれば本望です。

 それでは!今日も良いボイトレを!