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子音の特徴を知り、活用する

2017/09/11

 今回は【子音の特徴を知り、活用する】というお話です。前回の記事で、母音の発声をしっかりと揃えることが大切だ、という話をしましたが、今回はその母音と切っても切れない関係にある子音のお話をしていこうと思います。子音は、発音するときに唇や舌、歯、喉などで息が狭められたり擦れたりして作られるわけですが、この子音の音の特徴を知りうまく活用することによって、歌の上達や表現力の向上、さらには個性を創出することにも繋がってくるのではないか、と私は考えています。動画などの具体例を挙げながら説明していきたいと思います。

 日本語では、母音単独でアイウエオという場合以外は、「子音+母音」というパターンになることがほとんどです。(k)という子音に(a)という母音がくっつくことで「か(ka)」になりますし、(k)+(i)で「き(ki)」、(s)+(u)で「す(su)」という感じです。この子音には色んなタイプがあって、それぞれにおいて空気の流れ方が微妙に異なります。例えば、p,b,mなどの一度唇を閉じることで空気を堰き止めるものや、t,d,nなどの唇は閉じずに舌と上顎をくっつけたあたりで空気を一度堰き止めるもの、k,gなどの口の奥の方で空気を一度堰き止めるものなどがあります。sならば歯の隙間を息が抜けていきますし(無声音)、その状態で声帯を鳴らすとzの音になります(有声音)。「ふ」という音も、hという子音(ろうそくを吹き消す時など)であれば唇のみを使いますが、fという子音(カタカナ語の時など)であれば上の歯と下唇を使いますので、音は全く変わってきます。wやyなどの子音は一度口の中でタメができるような発声ですし、mやnなどは、鼻に抜くような発声をすると上顎から鼻腔を響かせるような音も鳴らすことができたりします。ハミングネィはこれの応用といったところでしょうか。またこの子音の発音は、しゃべり方の癖や方言などによって個人差が出てくるものでもあります。簡単にカテゴライズしたりパターン化できないのが非常に悩ましいですが、私たちは様々な空気の流れを作りながら歌ったり喋ったりしているんだと理解していただければと思います。そしてこの子音による空気の流れ方をうまく活用することによって発声がしやすくなったり、言葉が聞き取りやすくなったり、歌が歌いやすくなったりすることにつながってくるわけです。様々な子音に気を配って歌っていくことで、個人差こそありますが、新たな感覚に気づくきっかけが得られるかもしれません。日々のボイトレの中でも、いろいろと研究をしてみてくださいね。

 それでは、この子音の特徴を活用した発声練習法の紹介に移ります。まずはmの音から。母音の前につけるとマミムメモになりますね。これは一度唇を閉じて発する音なので、空気の流れに勢いをつけることができ、声を前に出す感覚を養うことにつながります。ドレミファソファミレドの音階で、マママママ…と発声したり、最初の音だけマで発声して、マアアアア…と発声してみてもいいでしょう。次にnの音です。ナニヌネノですね。これは舌と上顎がくっついてから声が出ることから、上顎や鼻腔を共鳴させた音をバランス良く出す感覚を養えます。鼻腔に響きを集めすぎることなくしっかりと前に声を出すことを意識しながら、先ほどのようにナナナナナ…とやってみてください。さらにhの音です。これはハヒフヘホですね。この発音では、ハは(h)+(a)、ヒは(h)+(i)、フは(h)+(u)…という具合に分解しつつ、それぞれをハッキリ発音することで、母音のみで発声するときに比べてより多くの息を吐き出すことができます。ハなら、hの音の上にaの音が乗っかるような感じで発音することで、息の流れを感じやすくなったり、一定量の息を吐き続けられるので音量のばらつきが少なくなります。その他にも子音の特徴を生かした発声練習はたくさんあるのですが、代表的なものを、参考までに。いろいろ試してみてくださいね。試すなかで、母音のみの発声との違いや、発声のしやすさの違いなどが発見出来れば、ボイストレーニングの幅を拡げることに繋がるでしょう。

 最後に、動画を幾つか挙げようと思います。子音の発音に特徴のある歌い手さんのライブ動画です。日本語における子音の発音、ということで、邦楽を主にセレクトいたしました。

 まずは森山直太朗さんです。代表曲『さくら(独唱)』と迷ったのですが、季節もピッタリということでこちらを挙げさせていただきました。一番わかりやすいのはやはりサビの最初の「夏の終わり」という部分でしょう。「な(na)」のnの音でとてもタメていますね。また、終わりの「お」の部分で、hの子音が聞こえてきます。裏声になって空気が抜けていく感じがよく出ていますね。また、「風吹き抜けるから」の部分のkの音・・・か(ka)ぜふき(ki)ぬけ(ke)るか(ka)らぁ・・・も、とてもわかりやすいですね。お母様の影響も多大に受けてらっしゃるんだろうなぁなんて思ったりして。ざわわ、ざわわ、ざわわ。

夏の終わり – 森山直太朗
https://www.youtube.com/watch?v=xGdK3QA7gs0

次に久保田利伸さん。嬬恋村のap bank fesでのパフォーマンスです。名曲の珍しいアレンジに耳がいきがちですが、せっかくゆっくりと歌っていらっしゃるので、きちんと子音をチェックしていきましょう。一番わかりやすいのはサビの最後、「LA LA LA・・・」の部分。普通に日本語なら、さらっと「ら」と言ってしまいそうなところを、Lの音をしっかりとタメて発音していますね。日本人離れした、ブラックミュージックのような、と形容される歌い方ですが、そのカラクリは、子音を英語っぽく、少し強めにはっきりと発音しているところ。子音を少し伸ばしたり、時に強く発音してあげることで、もたるようなリズムや跳ねるようなリズムを作り出すところにあります。きちんと日本語を発音することよりも、後ろのビートに乗っかってスピード感やグルーヴ感を生み出そうとするような歌い方にすることに重きを置いている感じもしますね。

LA・LA・LA LOVE SONG with Bank Band – 久保田利伸
https://www.youtube.com/watch?v=2cdUL3jixGY

 そして、宇多田ヒカルさんです。デビュー曲をバンドサウンドに乗せて歌っていますね。久保田さん同様英語のような歌い方に聞こえるのは、メロディーラインと歌詞の関係性や楽曲全体のテイストだけでなく、特徴的な子音の使い方に起因する部分も大いにある思います。歌い出しの「七回目の・・・」や「名前を・・・」のnの音だったり、「唇から自然と・・・」のkやsの音も個性的ですね。ところどころ出てくるdの音の前には、ん(n)の音が聞こえることもあったりして。日本語の歌なのに、ニューヨークのオーディエンスの身体を揺らすことができてしまう歌い方である、とも言えるでしょう。

automatic – 宇多田ヒカル
https://www.youtube.com/watch?v=ZSdmP11QG9Q

 ちなみに、洋楽でも応用が利いてきます。言語の意味がわからなくても、歌い出しの子音などをしっかり聞いていると参考にできることがとても多いことに気がつくはずです。オススメはカーペンターズ。ボーカルのKaren Anne Carpenterは、歌声が素晴らしいだけでなく、子音の発音がものすごく分かりやすいので、英語のリスニング力向上にも役立ってしまうかもしれません。是非聞いてみてくださいね。

I Need To Be In Love – Carpenters
https://www.youtube.com/watch?v=mTVpNXG7iBk

 実はまだまだ紹介したい動画がたくさんあるのですが、分量の関係で(渋々)割愛させていただきます。あとはどんどんご自身で、気になるシンガーさんの子音の発音の処理の仕方をチェックしてみてください。新たな魅力に気付くこともあるかもしれませんよ。そして気付きを得られたらどんどん真似してみましょう。すると、真似しやすくて、声が出しやすくなって、録音して聞いてみてもカッコよくキマっている!と思えるような子音の処理の仕方をしている作品や動画に出会ってしまうかもしれません。そうなればしっかりと定着させられるように練習して、他の曲にもどんどん応用させることを楽しみましょう。逆に上手くいかないようなものに出会ってしまうことがあるかもしれませんが、それはあまり気にしすぎずに。現時点でのスキルが足りていないだけならどんどん頑張って練習すればそのうちできるようになるでしょうし、何回やっても時間をかけても難しい場合はそもそも向いてないかもしれないので、サクッと諦めて別の歌い方を探ってみましょう。そうやって試行錯誤するなかで歌い手の個性というものは創出されていくんだと、私は勝手に思っていたりします。いろんな楽曲を歌ってみましょう。作れる方はいろんな歌を作って歌ってみましょう。どんどん自分の幅を広げて、掘り下げて、もっともっと歌うことを楽しめるようになりましょう!

それでは!今日も良いボイトレを!