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ファルセットとヘッドボイスの違い

2017/02/13

こんにちは。
東京・吉祥寺 M&N Bit Of Sound ボイストレーニングスクール
ボイストレーナーのフルカワです。

今回は、【ファルセットとヘッドボイスの違い】というお話です。

歌のスキルアップを目指してボイストレーニングのレッスンを受けたり本やウェブサイトなどで情報収集をしていると、様々な専門用語と出会うと思います。今回お話するファルセット(裏声)とヘッドボイスもその代表例なのですが、この二つの言葉についてどのような共通点と相違点があるのかを説明しつつ、様々な動画を挙げながら具体的に説明していきたいと思います。

まずはファルセットとヘッドボイスの共通点ですが、まずは高いピッチ(音程)に対応するために作り出す声であるという点です。表の声(地声)で張り上げても出ない音域を出す場合に使われる声であり、息の吐き方や力の加え方の調節で柔らかく出すのが基本とされています。声帯の使い方としても、声帯を伸ばして振動する部分を薄くしながら鳴らすという点では共通です。また、定義は様々なのですが、クラシックの発声法には【頭声】と呼ばれる発声法(英訳するとHead Voiceですね)があり、これを裏声とほぼ同義として捉える考え方も存在するようです。

次に相違点ですが、まず大きな違いとしては息漏れがあるかどうかという点でしょう。ファルセットは息漏れが多く、ヘッドボイスは息漏れが少ないとする考え方が一般的のようです。声帯の動きとしても、ファルセットを鳴らす時の方がヘッドボイスの時よりも声帯の閉鎖が弱くなるため、息が多めに漏れていってしまう発声になるんですね。多少主観的な物言いになってしまいますが、ファルセットよりもヘッドボイスの方が芯のある声になる感じがします。ファルセットで歌うよりもヘッドボイス寄りの声で歌うことでよりパワフルな歌になるという印象です。もちろん表の声(地声)の方がパワフルなのは言うまでもありませんが。

さてそれでは実際に様々な動画を紹介していきます。比較してみましょう。まずは男性ボーカルから。

まず最初に Bee Gees の1977年の作品 Stayin’ Alive です。印象的で耳に残りやすいイントロと、全編にわたって完成度の高い美しいコーラスワークに、聞き覚えのある方も多いと思います。柔らかい声質であっさり歌っている部分と、後半のロングトーンなどはとても息漏れの少ない固い声も使っている部分とがあり、様々なバリエーションが楽しめる一曲だと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=I_izvAbhExY

次に Earth, Wind, and Fire の、こちらも1977年の作品 Fantasy です。ボーカルの Philip Bailey のパワフルかつ表情豊かなハイトーンについ釘付けになってしまうライブ動画をアップしました。バンドとの一体感、グルーブ感、そしてクライマックスの魂の叫びをお楽しみください。

https://www.youtube.com/watch?v=L0CVoFsUhC4

続いて Maxwell の1997年の MTV Unplugged の中から、This Woman’s Work という作品です。最初の語りの時の声と彼の風貌からは想像できないようなハイトーンボイスに、私自身最初に聞いた時はかなり吃驚してしまいました。音量の大小だけではなく息の混ぜ具合でも抑揚を作れてしまうあたり、もはや声を通り越して楽器と言ってしまっても言い過ぎではないような感じもします。

https://www.youtube.com/watch?v=-JYxc5ftEzg

 

最後は Sam Smith です。2015年のグラミー賞に輝いたアルバムから Restart という曲を選曲しました。出だしのAメロの部分は普通に入るのですが、Bメロの部分でファルセットに変わり、サビの部分で力強く(これはヘッドボイスにあたるかな?)ハイトーンを炸裂させています。とても24歳(今日現在。レコーディング当時は20歳過ぎくらいか?)には思えない表現力の振り幅には脱帽です。

https://www.youtube.com/watch?v=ZGzHgo7n4jM

 

続いて女性ボーカルです。

まずは Olivia Newton-John のカバーした Close To You です。声質の変化がとてもスムーズで境目がなく行ったり来たりできるのは、自身の声帯の使い方を高度に理解できている証拠だと思います。最も高い音まで上がった後に1オクターブ以上下がる部分などは技術的にはとても難しいですが、声帯の使い方の柔軟さと呼吸のバランスが絶妙で、全く無理がありません。

https://www.youtube.com/watch?v=DEUTILP7Fa0

 

次に Ariana Grande の The Way という楽曲のアコースティックバージョンです。先ほどの Sam Smith よりもさらに若い23歳。世界にはすごい若者がいるものです・・・。アコースティックバージョンならではの柔らかい表現の中にファルセットを混ぜてみたり、ヘッドボイスになってみたり、境目なくいろんな表現ができているのは先ほどの Olivia Newton-John と同様。本人はきっと細かいところは何も気にせず、ただただ楽しく歌ってるだけなんだと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=pOgyUbNbnmo

 

続いて、ポップス系の女性ボーカルで全てをファルセット寄りの声で歌っている動画を見つけられなかったので、ここであえて少しクラシック寄りのボーカルグループの楽曲を紹介します。アイルランド出身の4人組 Celtic Woman の You Rise Me Up です。フィギュアスケーターの荒川静香さんがエキシビジョンで使用した曲として有名ですね。全編にわたってファルセットを多用しているのでクラシックっぽい雰囲気ではありますが、クラシック畑のシンガーさんがポップス寄りの曲を歌うとこうなる、という意味での好例なのではないかと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=Yfwlj0gba_k

 

そして最後に、本格的なクラシック系の発声を比較材料として挙げておきたいと思います。モーツアルトの魔笛という楽曲の Diana Damrau によるパフォーマンスです。誰しもがきっと耳にしたことのある、あのハイトーンです。最も高い音の時に脳天から突き抜けていくような感じがすると思うのですが、これが最初の方で述べた【頭声】という発声法になります。圧倒的なソプラノです。

https://www.youtube.com/watch?v=dpVV9jShEzU

いかがでしたでしょうか。動画を見て、なんとなくイメージが湧いたという方もいらっしゃるでしょうし、違いがより一層わからなくなったという方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんね・・・。実はこういった専門用語をどう定義付けするかというのはとても難しい話で、極端な言い方をすれば、学者の数だけ、もしくは、声の仕事に就いている者の数だけ解釈の仕方があると言っても過言ではありません。同じ歌声を聞いていても、特にハイトーンの部分において、それをファルセットと捉えるかヘッドボイスと捉えるかは人によって意見が分かれることもありうるのです。私自身も以前人前で歌っていたときに、さまざまな評価のされ方をした経験がありますし、自分の身体や声帯の感覚の中でも、ある一定の区分みたいなものがありますが、それが他の人にも当てはまるなと感じる部分もあれば、ちょっとズレてくるなと感じられる部分もあります。したがって大事になってくるのは、ざっくりした定義のようなものは存在するけれど、あまり気にしすぎないようにすること。そして、方向性さえ間違えていないのであれば、より質の高いものを目指してひたすら練習に励むこと。この二つです。少しずつでも理想に近づこうとするうえで、知らないより知っておいたほうが良い知識ももちろんあります。ですが、どんどん実践してみて今までできなかったことができるようになった段階で、知識の部分とのすり合わせをしていったほうが理解が早まると思います。トレーナーにもサポートしてもらいながら頑張っていただければと思います。

それでは!今日も良いボイトレを!