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母音の発声を揃える

2017/08/28

こんにちは。
東京・吉祥寺 M&N Bit Of Sound ボイストレーニングスクール ボイストレーナーのフルカワです。

 今回は【母音の発声を揃える】というお話です。当スクールのボイストレーニングでは、リップロールハミングやネィなどの一風変わったトレーニングだけではなく、実際の歌唱に近い発声法ももちろんしっかりと練習していくわけですが、その代表的なものが、母音(アイウエオのことです)の発声を丁寧に揃えていく、というトレーニングです。このトレーニングは楽曲のジャンルや言語に関係なく大事なトレーニングになりますので、具体的に掘り下げて説明していきたいと思います。

 前回までお話ししていたハミングやネィというトレーニングは、どちらかというと筋トレに近いトレーニングです。声帯を閉める筋肉を鍛えて瞬発力を高めたり、音域を拡げたり・・・ざっくり言えば、コントロール能力を鍛え上げて自由自在に動かせるようにするためのものだと言えるでしょう。それに対して今回お話する「母音の発声を揃える」というトレーニングは、正しいフォームを身につけるためのものだと思っていただければと思います。スポーツで例えると、正しいフォームを身につけられれば、その人が持っている能力を最大限発揮できるようになります。すると無駄な動きも少なくなり、無駄な力も入りにくくなり、身体への負担も少なくなります。そうすることで、良いパフォーマンスをより長い時間維持できるようになりますし、疲れが次の日にも残りにくくなるでしょう。これはそのまま発声や歌うことに置き換えることができると思います。正しい声帯の使い方を身につけることによって能力を最大限発揮することができるようになりつつ、疲れにくい動かしかたを身につけることができれば、一石二鳥ですね。さらにハミングとネィでその能力を鍛え上げられることができれば、鬼に金棒ですね。

 それではなぜ「揃える」という作業が必要になってくるのか。それは、ボーカリストさん一人ひとりに、それぞれ発声の癖があるからなんです。私自身もレッスン時に生徒さんの発声をまずは確認させていただくのですが、ほとんどの場合、アイウエオの発声のやり方にばらつきがあります。それは声帯のポジションがナチュラルかどうかだったり、声がすんなり出るのかこもるのかだったり、音量だったりピッチ(音程)やリズム(タイミング)の正確さだったり、とにかく十人十色、百人百様、千差万別です。比較的口を大きく開ける「ア」や「エ」はすんなり鳴らせるのに、口をすぼめる「オ」や「ウ」ではこもってしまったり、比較的横に広げる「イ」や「エ」で力みが生じてリズムや音程が狂ってしまったり、というのがよくあるパターン。良く言えば個性的で、悪く言えば癖が強いわけです。癖が強いということは、それはすなわちフォームが悪く、ばらつきがあって揃っていないということになりますので、ボイストレーニングでしっかり修正していかなければならない、ということです。トレーナーに客観的に分析してもらいつつ、ご自身の感覚とのすり合わせをしつつ、きちんと揃えていけるように練習していきましょう。

 また、このトレーニングを通して母音の発声が揃ってくると、歌い手の喉にとって良いだけでなく、歌に安定感が出てくることによって、聴き手の耳のストレスも軽減することができてしまいます。例えば、一番盛り上がる部分でロングトーンが出てくる楽曲があるとします。正しいフォームで鳴らせていれば無駄のない心地よい声になりますが、正しくないフォームだと苦しい声になってしまうかもしれませんし、歌詞が変わって伸ばす母音が変わった時に響き方が変わってしまうと、どうしてもその違いが気になってしまうこともあったりします。特にステージに上がって人前で歌うボーカリストさんには、母音の発声をきちんと揃えていただきたいと切に願うばかりです。

 そういった揃える練習をしていく中で大切なのが、苦手なものを練習しすぎない、という考え方です。様々なトレーニングをこなしていく中で、どうしても得意不得意が出てきたり、楽なものとそうでないものが出てきたり、負担が少なかったり大きかったり、プラスとマイナス、ポジティブとネガティブ、必ずと言っていいほど出てきます。そうした時に、真面目な生徒さんならばきっと、悪いものを良くしていかなければならない、苦手を克服しなければならない、と思って頑張ってしまうはず。アイウエオで「ウ」が特に苦手だと思ったら、「ウ」ばっかり練習してしまうんですね。もちろんそれも大切なのですが、そればかりやりすぎてしまうと、全てが悪い方に引きずられてしまう可能性も大いにあります。それまで比較的良い感じだったものまで引きずられて悪い方に揃ってしまう・・・なんてことになってしまったら最悪なので、苦手を克服するような練習は、一人で頑張りすぎずにトレーナーと共に慎重に行うようにしてくださいね。

 まずはできることから。できることだけでも良いくらいです。比較的良い感じの発声ができているものだけを定着させるような感じで反復練習を行っても良いと思います。良い発声ができている時の声帯や喉周りの筋肉の動き、響き方や音の質、呼吸の量などのバランスをしっかり感じながら、悪い発声になってしまっているものに当てはめ移行する・・・なんてことができれば、かなり質の高い練習になると思います。良い部分を多く見つけ、それを悪い部分に応用させるのが基本。悪い部分を自分で必死にこねくり回していてもなかなかうまくいかないものですので、そこはトレーナーに頼っていただければと思います。最初は雲をも掴むような話かもしれませんが、レッスンやトレーニングを積み重ねていけば、必ず少しずつ揃えるためのコツが掴めるようになっていきます。以前の自分よりも良くなったなと思えることを一つ一つ増やしていきましょう。

それでは!今日も良いボイトレを!